酒蔵探訪 齋彌酒造店編

石脇地区の齋彌酒造店へ

由利本荘市石脇地区は、背後に新山、前に子吉川を臨み、江戸時代には北前船の寄港地として亀田藩の湊町として栄えたところです。
春の訪れを感じさせる3月初旬、この由利本荘市石脇地区で明治35(1902)年から酒造りをしている齋彌酒造店(さいやしゅぞうてん)の酒蔵見学に訪れました。

玄関を入ると右手にショールーム、左手にはギャラリーとして開放されている「酒蔵さろん・角太倶楽部」があります。
酒蔵でおなじみの杉玉のさきにある事務室に酒蔵見学に来た旨を伝えると齋彌酒造店の営業部長・佐藤さんが案内してくださるとのことでした。

まずは、角太倶楽部で齋彌酒造店の概要などをご説明いただき、
その後で酒蔵見学です。

齋彌酒造店の前
齋彌酒造店の中
湧水を試飲

酒造りを支える湧き水

石脇地区は「穴を掘れば水が出る」と言われるぐらい、新山からの良質で豊富な伏流水に恵まれており、酒造りだけでなく、醤油や味噌の醸造、うどんなどの製麺にも利用されています。

この水は一般的には軟水に分類されるものですが、酒造りに使う水としては中硬水ともいえるものだそうです。

実際にこの水を飲ませていただくと、とてもまろやかで、おいしいものでした。

湧き水

酒造りはこの作業で決まる!

酒造りの現場に入ると蔵人の皆さんが気持ちの良いあいさつをしてくださいます。
齋彌酒造店では午前と午後に行う作業が決まっているそうで、私が訪れた時は、午後の作業・洗米と浸漬が、まさに行われているところでした。

作業場の凛とした空気の中、齋彌酒造店の杜氏・高橋藤一さんとお会いしました。
高橋さんは「酒造りに大切なのは、洗米と浸漬に手間ひまを惜しまないことで、基本中の基本だ」と言います。
そして「酒造りの段階で人が手をかけられるのはこの洗米と浸漬だけ」と言い切ります。

そのため齋彌酒造店では、蔵人が10人がかりで洗米を4回行い、10キロごとに糠の濁りのないきれいな水で浸漬を行うそうです。

高橋さんのお話を伺っている最中も、緊張感が張り詰める”静”の時間と機敏な作業の”動”の時間が交互に繰り返されていました。

浸漬の様子
浸漬に臨む蔵人

驚きの麹室!

次は、麹室(こうじむろ)に案内されました。
この部屋は、麹菌の繁殖を促すため暖かくなっています。

一般的な酒造りでは、麹菌の繁殖した蒸米を手でほぐす「切返し」という作業を行うのですが、齋彌酒造店では蒸米を手でほぐす必要がないそうです。

高橋さんが蒸米を山にして、手で押して見せてくれました。
なんと!蒸米は潰れずに膨らんで元に戻ります。その蒸米を手に取ってもまったくベタつかず、簡単にほぐれます。
潰そうとしても潰れない蒸米にびっくりです。

高橋さんは、「洗米と浸漬に手間ひまを惜しまないことで麹をほぐす必要がなくなる」と言います。

ちなみに麹室は、内壁が秋田杉が作られていて、作った時には意識してなかったそうですが、木が自然に湿度調整をしてくれるそうです。
そのため、当初入れていた湿度調整の機械は使っていないそうです!

麹室の様子
酒母室の様子

オリジナルの酒母

次に見せていただいたのが、酒母室です。
ここは酒造りの主役である「酵母(酒母)」を育てるところです。

酒の味を決めるといわれる酵母菌も、高橋さんが抽出したものを自家培養してこの酒母室で酒母にしているそうです。

”酒造りに人の手をかけない”からこそ、使う酵母菌は納得できるものを使うのでしょうね。

そして酒母室の隣には発酵に使う仕込みタンクがあります。
2階に上がって、タンクの中を見に行きます。

櫂入れしない酒造り

齋彌酒造店の酒造りの最大の特徴は、酒造りの象徴ともいえる醪(もろみ)をかき混ぜる「櫂入れ」という作業をしないことだそうです。人の手でかき混ぜなくても、自然対流でゆっくりと回るそうです。

仕込みタンクを仕込み1日目、仕込み2日目というように、順に見ていくと醪の表情が毎日のように変わっていき、こんなにも劇的に変わるかと驚きでした。
(右下の写真は、左が仕込み1日目のタンク、中央が仕込み3日目のタンク、右が仕込み10日ほどたったタンクの表面です。)

高橋さんの「酒造りで人が手をかけられるのは洗米と浸漬だけ」と言う酒造りは、タンクの中の酒造りは自然の営みにまかせ人は外の環境を整えるというもので、麹室に引き続き、この仕込みの段階も驚きのものでした。

しかも齋彌酒造店では、この仕込みに使うタンクの7割しか醪を入れないそうです。
多く入れればできる酒の量は増えますが、自然対流の具合が変わるので、より良い味を求めた結果がこの量だそうです。

仕込みタンクの様子
研究エリア

研究に支えられた独自の酒造り

次に見せていただいたのが、高橋さんの研究エリアです。
高橋さんの常識を打ち破る独自の酒造りは、地道な研究に支えられていて、多くの賞を受賞している現在も続けられています。

抽出した酵母菌を培養し、毎日のように麹を作っているそうで、「毎日麹に触れている高橋さんの手はツルツルしている」と営業部長の佐藤さん。
高橋さんに手を見せていただくと、ほんとに白くてツルツルしています。

そこに蔵人の方が、できたての生酒を持って来てくださいました。
口に含むとフレッシュな薫りとしっかりした味が口の中に広がり、とてもおいしいです。

酵母菌を培養。試飲

さらなる高みを目指して

さらに今回は、特別に品評会へ出す候補となっているお酒をいただきました。(※通常の酒蔵見学では飲めません。)

品評会に出す候補のお酒を会場と同じ室温20度において、その変化を確認中といういうことで、それぞれのお酒を飲ませていただきました。

酒造りに携わって50年以上の高橋さんですが、いまだに酒造りに満足していません。日々研究を重ね、静かな語り口ながらも熱い情熱で酒造りを説明してくださいました。
高橋さんは、「お客さんが払った対価に対して裏切らない。そして、お客さんがちょっと得したなと思える酒を造る。そしていろんな酒を飲んでもらったうえで、齋彌を選んでもらえたらうれしい」と語っていました。

今回の酒蔵探訪では、杜氏の高橋さんの酒にかける熱い情熱と地道な研究の積み重ねと努力、それに自然の営みの力に感動しました。
常識を打ち破る酒造りでできたお酒は、自然の営みの恵みです。
営業部長の佐藤さんはお酒と料理のマリアージュも楽しんでもらいたいと語っていました。

ぜひ、あなたも由利本荘の地酒を巡る旅にお出でください。

【酒蔵見学のお申し込み・問い合わせ】

株式会社 齋彌酒造店

電話:0184-22-0536(代表)

〒015-0011 秋田県由利本荘市石脇字石脇53

営業時間:午前8時~午後5時
見学時間:午前9時~午後4時
酒蔵見学は要予約(1週間前までに電話)
所要時間は30分~1時間30分(調整可能)
土・日・祝日、年末年始、盆は休み。
※ただし、イベントやその準備等で対応できない場合があります。

品評会用の酒の試飲の様子 品評会用の酒の試飲

※掲載されている写真はすべてイメージです。

※印象や味に関する表現は、個人によって感じ方が異なる場合があります。

※掲載されている情報は、取材時のものであって、予告なく変更されている場合があります。

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